第140章 I will.
重い防護服を着ると、私も降谷さんと風見さんのいるガラス張りの部屋の中に入った。
動けない降谷さんはこちらを見ることはできなかったが、風見さんは私を見て、驚いた顔をした。
「…めぐみさん。」
「なに?めぐみ、入って来たのか。ダメだ。」
私は風見さんの横にしゃがみ、降谷さんの首の爆弾を手で支えた。
「助手が必要かと思いまして。」
「だめだ、めぐみ。危険すぎる。」
「…降谷さん。申し訳ありません。正直、めぐみさんがいると助かります。」
「…っ。」
「ローラが今、大量の中和剤を作っています。それが終わり次第こちらに来るとのことでしたが、明日の結婚式までに、となると、一刻も早く作業を進めなくてはなりません。自分一人では…。」
「……わかった。」
「ごめんね、降谷さん。全然いうこと聞かない子で。」
「今更だろ。」
諦めた降谷さんは私達に身を委ねるように目を閉じた。
「まずはこちら側の液体火薬の方に中和剤を入れます。」
「はい。」
「ここを外して行くので、めぐみさんは液体が揺れないよう、ここをしっかり押さえておいてください。」
「はいっ。」
時間だけがゆっくりとすぎて行った。
指示する声と、作業の音だけがガラス張りの部屋に響いた。
「めぐみさん。ここのケーブルを持っていてもらえますか。」
「…?ごめんなさい、よく見えない。」
「これです。」
防護服が大きすぎて視界が狭く、中も暑くて頭がぼーっとし始めた。
だめだ。
私は顔全体を覆っていた防護服をばさっと取り払った。
「これですね。」
「めぐみさん!いけません!」
「めぐみっ!脱ぐな!」
私はあいた方の左手で降谷さんの頬をそっと撫でた。
「やっと…触れられた。」
「…っ。」
初め、風見さんから電話があってからずっと触れられなかった降谷さん。
冷たいガラス越し。
手を合わせても、背中を合わせてもずっと冷たかったーー…。
「温かい。」
「めぐみ…。」
私は降谷さんの目をじっと見つめた。
「死ぬ時は一緒だから。零さん。」