第138章 In sickness and in health,
降谷さんは口をパクパクとさせ何かを言っていたが、私は受話器から耳を離していたから何も聞こえなかった。
「どうなるかわからない異世界まできて!警察を辞める覚悟までして!迎えに来たのはどうして!?…そうまでしても!私と一緒にいたかったからじゃないの!?私の自惚れだったの!?ばか!ばかれい!」
声を荒げ、息を乱し、ガラスに向かって何度も台を投げつけ最後は感情的になり過ぎて、涙を流しながらも叫び続けた。
「はぁ…はぁ………。」
降谷さんは電話を耳に当てたまま、ガラスに手を当て、こちらを見つめていた。
私も一歩ガラスに近づき降谷さんの前に立った。
そっと手を重ねるように私もガラスに手のひらを乗せた。
ガラスは分厚くてぬくもりなんて全然わからなかった。
ーー…冷たい。
私は首輪に視線を向け、ぼろぼろと涙を流しコツンとおでこの辺りをガラスに当てると、降谷さんも同じように頭を同じところに当ててくれた。
ーー…こんなに近いのに。
降谷さんに視線を向ける、口をパクパクとしながら受話器を指差した。
私は頷き、ガラスから離れると受話器を手に取った。
「…僕の負けだ。…いいんだな?」
「……うん。ここで貴方を支えたい。食べ物買って来たり、なんでもいい少しでも何かやりたい。」
「はぁ…。僕の妻は本当強いな。」
苦笑いする降谷さんに私も笑いかけた。
「降谷さんが強いからーー…。私も強くなれるんだよ。」
「そうか。」
「…あと……つ、妻って言ったけど…ま、まだだからね!まだ書類上だけだからね!」
「まだそんなこと言ってたのか。めぐみから僕の妻だ!って啖呵切ったくせに。」
「…っう。」
「まぁ、いいよ。じゃあさっそく頼まれてくれるか?」
「はいっ!もちろんです!」
「椅子と水分を持って来てくれないか?そろそろ地べたに座るのは痛くなって来た。」
ちゃんとした頼み事が嬉しくて私は大きく頷いた。
「任せて!降谷さんらしい椅子買ってくるね!」
「…いや、持ち込むの大変だろ。折りたたみでいいよ。」
降谷さんが何か言っていたが、私はガチャっと受話器を戻し、エレベーターに向かった。