第138章 In sickness and in health,
数日後の朝、私は安室さんの代わりにポアロに行く準備をしていた。
真夜中に、仕事を変わって欲しいと連絡があったからだ。
忙しい降谷さんからのそう言った連絡は特に珍しいことではなかったが、電話口の降谷さんの声がいつもより真剣だったのは少し気になった。
仕事内容なんてもちろん教えてもらえないし、聞いたこともないけれど、重要な案件なのだろうと想像した。
モーニングの準備をして、店先を箒で履いて掃除をする。
もうすぐ梓さんも来るだろう。
「もう!お父さん!早く!遅れるわよ!」
「わぁーってるよ。と言うかそんなに急がなくても大丈夫だよ!」
「そう言うわけにもいかないでしょ!結婚式に遅刻なんて最悪よ!」
「まだ時間余裕だろうが!」
「でも、蘭ねーちゃん式場の近くで髪の毛セットしてもらったりするんでしょ?」
バタバタと足音と話し声が横の事務所につながる階段から聞こえて来た。
「今日の式はそんなことしなくていいだろ。」
「なんでよ。」
「そりゃ…あー、あの気心知れた刑事二人なんだから、こじんまりするらしいしよ。」
綺麗な服に身を包んだ、蘭ちゃん、コナンくん、毛利のおじさまが出てきて、私に気付いた。
「おはようございます。今日なんですね、結婚式。」
「そうなんです!あの二人の結婚式だから楽しみで!」
「私の分もお祝いして来てね。」
「はいっ!」
予約していたであろうタクシーに乗り込んで行った3人に私は手を振って見送った。
今日は天気が良くないが、きっとあの二人なら華やかな席になるだろうと朝は曇っている空を見上げた。
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「ちょっと銀行行ってくるねー!」
梓さんにそう言って私は店を出た。
取引先とのやり取りのためだ。
銀行のついでに郵便局の仕事も終わらせて、私はポアロへと足を向けた。
遠くで聞こえて来たのは消防車のサイレン。それも何台も聞こえてくる。
「ーーどこか、火事かな。」
音が聞こえた方をみると、遠くにかすかに見える煙。
ーーこれが事件の始まりだったなんて、この時の私は何も知らなかった。