第136章 For better or for worse,
あれから数ヶ月が経ち、私はすっかり元通りの暮らし……いや、それ以上に充実した毎日を過ごしていた。
街を帽子も被らず堂々と歩き、美容院で髪を整え、化粧をし、好きな服を着て楽しんでいた。
マスターと話をしてすぐにポアロに戻ることもできたし、家も快適に過ごしている。
ーー幸せだ。
私は朝のトーストにバターを塗りながら、今の幸せを噛み締めた。
コーヒーを淹れ、私はもう一度寝室へ。
カーテンの未だしまっている薄暗い寝室。
ベッドには大きな膨らみ。
そこにそっと手を添えて、優しく揺らした。
「降谷さーん、ご飯できましたよ。」
返事はない。
ーー…まただ。また狸寝入り。
「んもー。」
私はベッドの端に腰をかけて、目を閉じじっとしている彼の頭を撫でた。
私がこうやって起きないわけがない。
ーー待ってるんだ。
「起きて、零さん。」
そう耳元で呟いて、頬に自分の唇を寄せた。
「ん,起きる。」
起きてたくせに。
「また夜中に服脱いで。服着て寝てって言ってるのに。」
「こっちの方が落ち着くんだ。」
「それは自分のお家でやってください。」
すると降谷さんは手を伸ばし私の手首と首の後ろに手を回すと、ズルズルと布団の中に引きずり込んだ。
「もうここも僕の家みたいなもんだろ。」
とは言ってもそんな毎日来るわけでもなく、週に1回あるかないかくらいだ。
忙しい降谷さんは警視庁で寝泊まりしたり、組織の任務で夜動いたり相変わらず無茶ばかりだ。
引っ張られたため私が上に覆いかぶさるように、降谷さんの顔の横に手を置いた。
「パンもう焼いたから。」
「んー、少しだけ。」
「いつもそう言ってポアロギリギリでしょ。」
一回だけと、チュッと降谷さんの鼻の頭にキスを落とし,私はベッドから抜け出した。
「んーー。」
なんか不満なんだろう唸りながら布団のなかでもぞもぞしてる降谷さんが可愛くてふふっと笑うと、ムッとした顔の降谷さんが枕と布団の隙間から私を睨みつけてきた。
何気ないこんな朝が物凄く幸せだ。