【R18夢小説】手に入れたモノを護る為に【HQ/影山飛雄】
第10章 第六話 悪阻
伊織の妊娠が分かってから二週間後。新たな変化が伊織の身体に襲いかかってきた。
匂いを嗅ぐだけで吐き気に襲われる……悪阻だった。
学校生活は何とか耐えている様だったが、隠れて吐くのを繰り返し行い、食べられる物がぐんと減ってしまっていた。
「……うっ…………」
「気持ち悪いならば、我慢しないで吐け。大丈夫、傍に居る」
学校の人が来ない場所にあるトイレで、伊織は悪阻から嘔吐してしまっていた。
今日は特に酷いらしく、青白い顔色をしている。
背中を摩ってやってはいるが、悪阻からの吐き気なので気休めにならない事は分かっている。
「……はぁ……はぁ……」
「口、濯ぐか?それとももう少し吐いておくか?」
俺の言葉に顔を上げた伊織は、何も言わずに俺を見ている。その表情を見て、黙ってペットボトルの水を口に含ませ、濯がせると優しくだきしめてやった。
「……飛雄…………」
力無くしがみついて来る伊織を、壊れ物の様に繊細に扱う。
悪阻が酷ければ点滴などをする事もあるらしいが、それが出来ない伊織には耐えてもらうしか方法が無い。
「……飛雄の匂い……落ち着く…………」
「離れないから、好きなだけ嗅いでていい」
「……うん…………ごめんなさい」
伊織は悪くないのに謝られてしまい、言葉に詰まる。
そもそもこの吐き気の原因は、俺が伊織を妊娠させた事が原因であり、根源は俺にある。
伊織が妊娠を望んでいたとは言え、無理矢理孕ませた事実は変わらない。
俺が伊織を手に入れる為に選んだ方法が、子供を孕ませる妊娠と言う行動だった。
その為に伊織は十五で妊娠して、十六で出産する羽目になったのだ。
だから、伊織が少しでも辛そうにしていると罪悪感は出てきてしまう。妊娠させた事自体に後悔は微塵も無いが、こうも妊婦としての変化に苦しむ姿は見ていて辛い。
実際に苦しんでいる伊織はもっと辛いのだと、勿論分かっている。
「……悪阻、変わってやれなくてすまない」
「だい……じょうぶ……赤ちゃんの為、だか……ら」
青白い顔色をしたまま、腹を撫でるのだから俺も腹に手を宛がってやる。
俺が腹を触ってくれた事が嬉しいらしく、伊織は嬉しそうに俺の胸に顔を埋めていた。
「……楽になってきた……から」
伊織の言葉を俺は信じる以外、道が無かった。
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