第68章 約束の桜
ピクシスとエマが教会の扉の前に着くと、
教会の中から、バイオリンとフルートが
優しい音楽を奏で始める。
「……な、なんか緊張してきた……」
ピクシスは強張った表情を浮かべるエマを見て
小さく微笑むと、
力の入ったエマの手に
そっと自分の手を添える。
「これから歩くバージンロードは、
エマ。お前の人生の軌跡だ。
言ってみれば、扉の前であるここは、
まだ母親の腹の中。
一歩踏み出せば、お前の人生の始まりだ。」
エマはピクシスの優しい表情を見つめた。
「お前が今まで色んな思いを抱いて
過ごしてきた過去と共に、
バージンロードの終点にいる
リヴァイへお前を託す。
……そして、これから先の未来を
リヴァイと共に作っていくんだ。」
「……バージンロードって、
そんな意味があったんだね。」
「だから、忘れたくなるような生い立ちも、
どんなに辛かった歳月も、
お前がここに辿り着くのに必要だった過去だ。
一歩一歩踏みしめて
一緒に歩こうじゃないか。」
ピクシスはそう言って
エマに微笑みかけ、
「まだ泣くのは早いと言うておろうが。」
瞳を潤ませているエマの頭を優しく撫でた。