第63章 飾らない言葉で
エルヴィンが珍しく冷静さを失っている事には、
ここに来てすぐの時から気付いていた。
声は震えていない、目も力強いままだ。
だが、自分のことを“俺”と呼んでいる。
滅多と聞いたことはないが、
それがどういう時かは知っていた。
飾らないエルヴィンから、
絶対生きて欲しいと思うリヴァイへの
必死の願いだからこそ、
ありのままの自分の言葉で
リヴァイに伝えたのだろう。
感情をコントロールすることをやめた
エルヴィンの力強い言葉は、
近くで聞いている自分の胸さえも熱くさせた。
エマは思わず、
リヴァイの腕を掴むエルヴィンの手に触れた。
エルヴィンは小さく息を吐くと
リヴァイから手を離し、
エマの手を握る。
エルヴィンの体温が
ゆっくり自分の身体を巡ったその時
エマは一つの賭けに出ることを決めた。