第61章 一生のお願い
「出発前にあれだけ言い寄っておきながら
こんな状態で帰って来るって、
どうなんですか?」
声が震える。
一度深呼吸をした。
「死ぬんなら、せめて何か
残してからにして下さいよ……
結婚もせず、子どもも作らず、
そのくせプロポーズはするって
矛盾してると思わないんですか?
堅実なリヴァイさんはどこ行ったんですか?」
……ダメだ。
これ以上言うと、
もう涙を我慢できなくなる。
そう思った時、リヴァイの手が
エマの手を握り返した。
握力は弱く、触れられた、と言う程度だが、
確かにリヴァイからの体温を感じる。
「思わせぶってないで、早く起きてください……
今起きてくれたら、
桜を見るのだって一生我慢します。
結婚式も、しなくていいです。
子どももいらないです。
……他の願いは全部叶えてくれなくて
いいですから……」