第58章 生きて
いつもと同じ冷静な表情の
エルヴィンだったが、
エマは一抹の不安を覚えながら、
エルヴィンの元に駆け寄る。
エルヴィンはエマを講堂の外へ連れ出すと、
足早に廊下を歩き始めた。
「……エルヴィンさん、会議は?」
「いや。その前にエマに
伝えておきたいことがある。」
エルヴィンはそれだけ言うと、
再び口を閉ざす。
エルヴィンに連れられて着いた先は
個室の治療室だった。
治療室のドアノブを握ったまま
立ち止まったエルヴィンは、
エマの目を見つめると
「エマ。
落ち着いて話を聞いてくれ、
とはもう言わない。」
そう言って、ドアを開けた。
治療室の真ん中に置かれたベッドの上には
人が横たわっている。
最悪の想像がエマの頭を過るが、
それを振り払うかのように目を伏せた。