第55章 作戦の上の作戦
「ムーンストーンと言うだけあって、
月の力があると信じられているそうだよ。
月は夜空で旅人が道に迷わないよう
暗闇を照らしてくれることから、
人生においても迷いを振り払って
確実に進めるように支えてくれるらしい。」
エマは静かに
エルヴィンの手を握り返す。
「そして、この柔らかくて温もりのある色味は、
心や精神を安定させる効果が
高いと言われている。
今君は、心が不安定だと嘆いていたから
丁度良かったと思ったんだよ。」
エルヴィンはそう言い終えたところで、
相槌すら打たなくなった
エマの顔を覗き込み
「……本当に君は、
感情がすぐ表に出るね。」
と、小さく笑った。
エマはエルヴィンの胸に
頭を預けると、
「そんなに自分の事を考えてくれて
素敵なプレゼントもらって……
泣かない人なんていないですよ。」
涙を拭いながらそう言った。
「そうか。
君が喜んでくれて良かった。」
エルヴィンは
優しくエマを抱きしめる。