第9章 活力の部屋、希望の人、
エルヴィンに連れられてきた部屋は、
頑丈な錠前で鍵がかかっており、
エルヴィンは胸元のポケットから
鍵を取り出すと、錠に差し込んだ。
「ここは、私の秘密の部屋なんだ。」
エルヴィンはそう言うと、
ゆっくりドアを開けた。
「こんな部屋があったんですか……?」
エマは思わず感嘆の声を上げる。
部屋には天井につく程、
背の高い本棚がずらりと並び、
その中には歴史書、実用書、
専門書、画集、小説など、
分類を問わず様々な種類の本が、
隙間なく綺麗に整理されていた。
「あまり人を入れたことがないから
少し埃っぽいが。
私にとっては大事な部屋なんだよ。」
エルヴィンはエマの背中を押して
部屋に入れると、
部屋で唯一のソファーに座らせた。
「エマ、反応が乏しすぎるが
気に入らなかったか?」
エルヴィンは部屋に入ってから
全然言葉を発していない
エマの顔を覗き込む。
そして、
「……その涙の意味を教えてくれるか?」
と、優しくエマを抱き寄せた。
「………すみませんっ……、」
エマはそう言っただけで、
再び口を閉ざした。
エルヴィンは何も言わず
エマを抱きしめ、背中を摩る。
部屋には、エマの
嗚咽交じりの泣き声だけが響いた。