第41章 敢闘の跡
「……ここ、痛くないんですか?」
エマは思い立ったようにそう言うと、
エルヴィンの胸のベルト跡に指を滑らす。
「ああ。痛くないよ。
これだけ皮膚が固くなれば、痛点も鈍る。」
エルヴィンはエマの髪を
優しく掻き上げながら笑うと、
「エルヴィンさんは、
こんな風になるまで戦ってたんですね……」
エマは小さく息を漏らした。
「そうだな。
私にとっては、敢闘の跡だよ。
そんな悲しそうな顔をしないでくれ。」
エルヴィンは今にも泣きだしそうな
エマの頬に手を当てる。
「ありがとうございます……」
エマはやっとそう言うと、
自分の頬に当てられた
エルヴィンの手をそっと握った。
「エルヴィンさんたち、兵団の方のお蔭で
私たちはこうして壁の内側で
幸せに過ごしていられるんですよね。」
エルヴィンは握られた手を、
強く握り返す。
「こうして身体を張って、
命を捧げてまで戦ってくれているお蔭で、
壁の内側にいる私たちは
少しも戦わずに済んでる。」