第39章 優しいキス
しばらく本を読んでいると、
エルヴィンは小さく伸びをした。
「あ。起きましたか?」
エマがそう言うと同時に、
エルヴィンはエマの腰に手を回し、
引き寄せる様に抱きしめる。
「……起きてない、ですか?」
エマの問いかけには答えず、
エルヴィンは深呼吸をするかのように、
ゆっくり息を吐くと、再び寝息を立て始めた。
『無防備だなぁ。こんな姿見てたら、
団長ってこと忘れそうだよ。』
エマはそう思い、少し頬を緩めると
エルヴィンの柔らかな金髪に指を滑らせる。
思い返せば、
いつも自分が撫でてもらうばかりで
エルヴィンの髪を撫でることは、
殆どなかった気がする。
そんなことを考えていると、
髪を撫でている手をいきなり掴まれた。
「え、起きてるんですか?」
エルヴィンはゆっくり目を開けると、
「……夢か。」
そう言って小さくため息を吐いた。
「……どんな夢だったんですか?」
エマの問いかけに、
「いい夢だったが、起きてもここに
君がいたから安心したよ……」
と、エルヴィンは優しい表情で笑い
少し身体を起こすと、エマにキスをした。