第38章 諦めない権利
「団長、俺、ほんとにもう限界なんで、
取り敢えず部屋戻らせて下さい……」
ジャンは懇願するような声でエルヴィンに訴え、
「そうか。手伝って欲しくなったら
私に声を掛けなさい。」
と、エルヴィンに背中を押され、
ますます赤面した顔で
少し前屈みになりながら講堂から出て行った。
「……エルヴィンさん、
ほんと容赦ないですね。」
エマは未だひかない顔の赤みを隠すように、
両頬を手で覆う。
「また競争相手が増えるのは厄介だからな。
早いうちから阻止しなくては。」
エルヴィンは冗談めかしてそう言った。
「男の人相手に、
あんな状態にさせることができるって……
一体どんな種類の色気ですか……」
エマは少しジャンが心配になりつつ、
エルヴィンに視線を送る。
「大丈夫だ。
それでも私は君にしか欲情しないよ。」
エルヴィンはそう言って
エマの髪を優しく撫でた。
「……大丈夫の意味が分からないです。」
全くおさまりそうにない赤面した顔を、
必死で隠すエマを見て、
エルヴィンは愉しそうに笑った。