第38章 諦めない権利
ジャンはエマの手に触れた手を
二の腕の方に滑らし、
「俺だって、団長や兵長に負けないくらい
エマさんのこと愛してるんだからな……」
と、周りに聞かれないよう、
エマの耳元で囁いた。
エマは一気に赤面する。
“愛してる”を、まさかジャンに
言われるとは思っていなかった。
その思いがけない一言を掛けられたことに
気が動転したが、
何より、ジャンの“愛してる”を聞いて、
これ程までに動揺している自分がいることに
驚いていた。
「なぁ、真っ赤なんだけど。
動揺してくれてんの?」
ジャンはエマの二の腕を優しく掴んだまま笑う。
「まさかジャンにそんな言葉、
掛けられるとは思ってなかった……」
「何でだよ。
今までもずっとそう思ってたんだけど。」
ジャンは呆れたような口調で言う。
そうだった……
この人は、本当に正直で鈍感な女性なんだ。
ジャンはそっとそう思い、
エマの二の腕に伸ばした手を
太腿まで滑らした。
エマが少し身体をビクつかせると
「……俺も、エマさんの争奪戦に
参戦させてよ。
30代ばっかだし、
一人くらい若い男増えてもいいだろ?」
ジャンはそう言いながら、
エマの太腿を指でなぞった。
エマは思わず手に持った包帯を
強く握り締める。