第36章 自分の意思
「笑いごとじゃないですよ、
エルヴィンさん……」
エマの息は未だに整わず、
なるべくゆっくり呼吸をしようと、
大きく息を吸う。
「……すまない。」
エルヴィンはそう言って
エマの髪を優しく撫で、
「君の言う通りだが、
その言葉を聞いて、また君が欲しくなったよ。」
と、エマの目を見つめた。
「私が苦しんでいる時は、
自分から進んで身体を許してくれたのに、
今はもうリヴァイに忠実な恋人か。」
「それ、厭味に聞こえますけど……」
呼吸の落ち着いてきたエマは、
横目でエルヴィンを見る。
「いや。相変わらず君は、
しっかりした自分の意思を持っているな、
と感心しただけだよ。」
「持ってないですよ……
ここ最近、自分の意思なんて
ぶれまくってますから……」
エルヴィンはエマの発言を聞き、
少し笑う。
「そうではないだろう?
君は自分の意思を持っているから、
決断できたんだ。
君の芯は、ぶれていないよ。」
「……そんなの気休めです。
ここに至るまで、散々色んな人を
散々振り回してきたのに。」
エマはそう言うと、
ベッドに寝転んだまま、
エルヴィンに背中を向けた。