第36章 自分の意思
「お疲れ様でした。」
エマはそう言いながら、
エルヴィンに目を向けると、
「風邪、移ってないですか?」
と、心配そうに顔を覗き込んだ。
「移してもらいたいんだが、
私はあまり病気をしない性質でね。」
エルヴィンはそう言ってエマに顔を近付け、
「だが、君の風邪なら、
移してもらえそうな気がするんだが。」
と、エマに唇を寄せた。
エマは自分の口を手で塞ぎながら、
「ダメですよ。と言うか、
もう殆ど熱は下がってると思います。」
と、エルヴィンの目を見入った。
「残念だな……」
エルヴィンは顔を近付けたまま、そう言うと
「では、風邪は移してくれなくてもいいから、
キスはしてもいいか?」
そう言って笑って見せる。
「いきなり積極的なエルヴィンさんに
戻りましたね……」
エマは思図らずも頬を赤らめた。
「そうだな。
何か、吹っ切れたんだよ。」
エルヴィンはそう言いながら
エマから顔を離す。