第36章 自分の意思
エマが目を覚ました時、
辺りは既に暗くなり始めていた。
『随分よく寝てたんだな……』
身体は昨日に比べ、随分楽になっていた。
頭痛もおさまり、
熱っぽさもないように感じる。
『明日からは、仕事行けそうだな。』
そんなことを思いながら、
ふと横を向くと
「エマ。起きたのか。」
そう言って自分に笑顔を向ける
エルヴィンがいた。
「……あれ、もう仕事終わったんですか?」
エマは壁にかかった時計を確認する。
丁度5時を回ったところだった。
「ああ。たまにはこんな日があっても
許されるだろう。」
エルヴィンはそう言いながら、
小さく笑う。
ワインに仕込んだ薬のことで
ナイルに脅しを掛け、
今日は仕事を早く切り上げさせてもらった。
なんてことを正直に言えるはずもなく、
エルヴィンはエマの髪を優しく撫でる。