第35章 揺れ動き続ける
「君を抱きしめたい。」
エマはエルヴィンを見つめ返し、
少し考えると
「……風邪が移るかも知れないので、
ダメです……」
冷静にそう答えた。
「そうか。それなら尚更だな。」
エルヴィンはそう言って少し笑うと、
ベッドに横になっているエマを
強く抱きしめた。
「君の苦しむ姿を見たくないんだ。
それが風邪のせいであっても、
私のせいであっても。」
エマは何も言えず、
エルヴィンの胸に顔を埋める。
エルヴィンの優しい匂いが、
心に沁み渡る。
「私に、その苦しみを分けて欲しい。」
「……もう、十分すぎるほど、
私はエルヴィンさんを苦しめてます……」
エマはエルヴィンの胸の中で言った。
「これ以上、どう苦しめたらいいんですか?」
エルヴィンは
エマの言葉を聞き、少し笑う。
そして、エマの目を見つめると
「そうだな。では取りあえず、その風邪を
私に移してもらうことから始めよう。」
そう言ってエマに唇を重ねた。