第35章 揺れ動き続ける
「すみません……
……エルヴィンさんが、
私から離れていくのが、怖いんです……」
自分の声が、
冷静さを失い震えていることには、
随分前から気付いていた。
この感情が湧き出てくるのは
風邪で不安だからでも、
独りが寂しいからでもないことにも
気付いていた。
自分がこれほどまでに動揺しているのは、
エルヴィンに突き離されるのが怖いからだ。
これだけ言っても、
もし、エルヴィンに突き離されたら。
そんなことを考えたくなかった。
自分の心は、ずっと揺れ動いたまま、
止まることがないようにも思える。
こんな状態で、
誰かの恋人になること自体、
間違っていたのかも知れない。
これでは、ずっと堂々とした
二股をかけているようなものだ。
自分が強く軽蔑することを、
自分自身がしている。
分かっているのに、
この揺れ動く心を止めることが出来ない。
いや、止めるつもりがないのかも知れない。
どれだけ自分は軽薄な人間なんだろう。