第35章 揺れ動き続ける
「……私、こんなに弱い人間だったんですね。」
エマのその言葉に、
「まぁ、風邪くらい誰でもひく」
と、エルヴィンは言いかけ、
「いえ、そうではなくて。」
と、エマに言葉を遮られる。
「……エルヴィンさん、やっぱり無理です……
ずっと痛いんですよ、ここが。」
エマはそう言いながら、
心臓の付近の服を握り締めた。
「こんな感情が芽生えていいはずないって
分かってるけど、
分かってはいるんですけど……
エルヴィンさんと距離を置くって、
すごく辛いんです……」
エマの目から涙が零れる。
風邪のせいだ、
風邪で体が弱ってるせいで、
こんなに心も弱ってるんだ。
そう思いながらも、
言葉を止めることが出来ない。
「もう我慢できない程に痛いんですよ……
……これって、エルヴィンさんを」
「エマ。」
エルヴィンは胸元の服を掴んだままの
エマの手にそっと触れる。
「それ以上は言わないでくれ……
……もう、戻れなくなる。」
エルヴィンは哀願するような声で、
呟くように言った。