第33章 心に触れるたび
「……すみません、」
ただ謝ることしかできなかった。
その言葉以外、
発してはいけない気がしていた。
もうエルヴィンに期待を持たせてはいけない。
それと同時に、
自分がエルヴィンに対して想う気持ちを
断ち切らなくてはいけない。
頭では理解しているのに、
エルヴィンを抱きしめる手を離す気には
どうしてもなれなかった。
エルヴィンは優しくエマを
抱きしめ返すと、
「いや、
こっちこそ驚かせてすまなかった。」
そう言って、ゆっくり息を吐いた。
「君は優しいからな。
こんな私を
放っておくことができないんだろう。」
「違うんです………」
思わず否定する言葉が口を突いて出る。
言ってはいけない、
そんなことは分かってる。
それでも、
もう言わずにいられる理性は
残っていなかった。