第33章 心に触れるたび
「……すまない。」
エルヴィンは片手で顔を隠し、小さく息を吐く。
隠しきれない頬の一部を、涙が伝うのが見えた。
「年のせいかな。
涙腺が緩くなっているようだ……」
そう言うエルヴィンの声は少し震えていて、
エマは沈黙したまま、目を伏せた。
この涙の意味を
エルヴィンから伝えられたら、
自分はエルヴィンを選ぶだろう。
ダメだ。聞いたらダメだ。
心の中で繰り返し唱え、強く目を瞑った。
「……この涙の理由を聞いたら、
きっと君は私を選ぶのだろうな。」
エマはエルヴィンの
その言葉を聞くなり、顔を上げる。
「……なんで、分かったんですか?」
気付いたらそう言っていた。
まるで自分の心の中を見透かされたようで、
驚きを隠しきれなかった。
「分かるよ。
君はそういう女性だからな。」
エルヴィンはそう言うと、
顔を手で隠したまま小さく笑う。