第32章 結婚予想図
「だが、ナイルは結構な
優良物件だったんじゃないのか?」
「優良物件って……」
エマは少し笑いながら言う。
「そうだろう?彼は憲兵団のトップだ。
給料もいいし、仕事にも真面目で、
誠実さもある。
彼と結婚すれば安定した生活が
保障されているだろう。」
エルヴィンがそう言ってエマを見ると、
「うーん。そうなのかも知れませんね。
サラにも言われました。
いっそのことプロポーズ
引き受けたらいいのにって。」
エマは少し考えるように、
首筋に手を当てた。
「でも、別にそんなことは
どうでも良かったんですよね。」
「……誠実さも、真面目さも、
金もなくていいってことか?」
「それは極論すぎますけど。」
エマは少し笑って、突っ込みを入れた。