第30章 愛されなくてもいい
自分はいつからこんなにも
女々しいことを考える生き物になったのか……
悪魔と呼ばれ、外道と蔑まれ、
自分でも認めざるを得ない程の
冷酷さと非情さを持って
兵団を率いてきた自分が、
人の心など、とうに捨てたはずの自分が、
こんなにも一人の女性を愛してしまっている。
エルヴィンは
そっとエマの頬に触れた。
それと同時に、
エマはため息を吐くような
呼吸をするが、起きる様子はなく、
また静かに呼吸を続ける。
エルヴィンはエマから手を離し、
目を瞑って自分の理性を働かせた。
これ以上触れたら、止まらなくなる。
この気持ちを、彼女にぶつけてしまう。
……もう、こんな思いをするのはやめにしよう。
いっそのこと、彼女を冷たく突き離し、
今後一切の接触を断とう。
彼女やリヴァイにとっても、自分にとっても、
それが最善の選択なのだろう。