第27章 ワインの思惑
「……そうだな。
ナイルに一服盛られたようだ……」
エルヴィンはそう言うと、
少しふらつきながら歩き出す。
「ちょ、ちょっと、待ってください。」
エマは思わずエルヴィンの身体を支えた。
エルヴィンはまた小さく息を漏らすと、
「……私は一人でもどうにかできる。
すまないが、今日は部屋で休ませてくれ……」
そう言って、再び歩き出した。
エマは少し考える様に
その場に立ちすくむが、
「いや。さすがにほっとけないです。
フラフラ歩かれるのは危険なので、
部屋までは送らせて下さい。」
と、エルヴィンの横に並んだ。
「……いや、もう理性が飛ぶ寸前なんだよ。」
「いいから私の言う事
聞いてもらっていいですか?」
エマは強い口調でそう言うと、
エルヴィンの手を握り、歩き始める。
エルヴィンは諦めたかのように、
エマの手を握り返すと
少し足早に自分の部屋へ向かった。