第27章 ワインの思惑
エマは厨房でじゃがいもと人参の
アウフラウフをオーブンに入れた。
その間、チョップドサラダを
皿に盛りつけていると、
オーブンからコクのある
チーズの香りが厨房に広がり、
ワインが飲みたくなる衝動に駆られる。
エマはオーブンの様子を見ながら
考えを巡らせていた。
今日、この場で、
自分の気持ちをハッキリさせる。
そう思い立ったのは、
憲兵団でワインをもらった時だった。
これをきっかけにして、
エルヴィンとゆっくり話せる機会を作ろう。
話してどうにかなることでも
ないかも知れないが
エルヴィンと接することがない限り、
自分の気持ちは分からないままだ。
その思惑通り、
エルヴィンは誘いを快諾してれて
今は静かにワインを飲んでいる。
エマは心の準備をした後、
調理を済ませて席に戻った。
そしてつまみを机に置いて椅子に座ると、
エルヴィンの異変に気付く。
「エルヴィンさん、もしかして、
もう酔いましたか?」
エルヴィンの顔は、
少し紅潮したように見えた。
エルヴィンは少し呼吸を弾ませたまま
エマに背を向け、
「……エマ。このワインは、
憲兵団の兵士からもらったと言ったな……
誰からもらったか聞いても問題ないか?」
と、エマに問いかける。
エマは何故そんなことを聞くのかと
疑問に思いつつも
「ナイル師団長から頂きました。」
と、素直に答えた。