第27章 ワインの思惑
「そうだったな。
私もようやく休みだ。」
エルヴィンは首元を緩めながら、
食堂のいつもの席に座った。
「それなら丁度良かったです。」
エマはそう言いながら、
ボトルに入ったワインを一本、机の上に置く。
エルヴィンはワインに目を向け、
ラベルを見ると、
「なんだ。
かなりいいワインじゃないか。」
そう言って目を見張った。
「そうなんですよ。
今日、憲兵団でもらったんです。」
エマはそう言いながら、
ソムリエナイフを取り出し、
コルクの中心にスクリューを刺し込む。
「だから、せっかくなので
エルヴィンさんと飲もうと思って。」
エマの言葉を受け、
エルヴィンは優しい表情で笑うと、
「そうか。ありがたいな。
お誘いにあずからせて頂こう。」
そう言って、そっとエマの手に
自分の手を添えた。
エマはエルヴィンの考えを察し、
ソムリエナイフから手を離し、
ワインボトルを支える。
エルヴィンはスクリューをゆっくり回し、
梃子の原理でコルクを抜いた。