第26章 涙の意味
ハンジが出て行ったあと、
エルヴィンは目を瞑って考え込む。
ハンジの言いたいことは分かる。
だが、必要のあるなしに関わらず
自分にできることをしたい、
その思いが強くあるのは確かだ。
調査に出られない以上、
自分にできることは限られている。
自分の身体を差し出すことで
兵士の力になれるのならば、
兵士たちを拒否する選択肢はない。
……それでも、
自分が乗り気であるか否かと聞かれれば
もちろん否だ。
好きな女性以外抱かずに済むなら、
それに越したことはない。
愛する女性を抱く喜びを知ってしまった今、
他の人間を抱くことが自分にとって
かなり難儀なことに変わってしまっていた。
『駄目だな……
こんなことを考えていると、
また思い出すじゃないか………』
エルヴィンは先日エマと
身体を合わした時のことが一瞬頭を過り
それを掻き消すかのように
大きく深呼吸をすると、
再び書類に目を落とした。