第25章 存在意義
その時。
「おい、お前。
また俺の女に手ぇ出してくれてんのか?」
リヴァイがジャンとエマの元に
歩み寄る。
「り、リヴァイ兵長!すみません!」
ジャンはエマから勢いよく離れると、
素早く敬礼をした。
リヴァイはジャンの両頬を片手で掴み、
「どいつもこいつも、
一辺倒にエマに手ぇ出しやがって。
女は他にもいるだろうが。」
と、眉間の皺をより濃くした。
それは兵長にも言えたことではないか。
と、ジャンは心の中で思いつつも、
リヴァイの目を真摯に見入る。
「だが、今回はお前の
冷静な判断により、エマも
エルヴィンも無事だった。礼を言う。」
リヴァイはそう言うと、
敬礼するジャンの手を掴み、降ろさせた。
「俺には勿体ない言葉です。」
ジャンは少しホッとしたような表情を浮かべる。
「今日だけは見逃してやる。
だが、明日以降も同じようなことをしていたら」
「す、すみませんでした!」
ジャンはリヴァイのその後に続く言葉を
想像して怖くなり、
思わず被せる様に謝った。
エマはその様子を見ながら、
「ジャン、本当にありがとう。」
と、ジャンに頭を下げる。
「……いいよ。
もうこんな無茶な真似しないって
約束してくれるよな?」
ジャンは少し小声で
エマに問いかけると、
「うん。
次はもう少し考えて行動します……」
エマはそう言って
ジャンの目を見つめた。
ジャンはもう一度リヴァイに敬礼した後
駆け足で食堂から出て行った。