第25章 存在意義
「………ありがと、」
エマはやっとそう言うと、
ジャンの腰に手を回した。
「お礼言うのはこっちだからな。
エマさん、いつもここで俺たちを
待っててくれてありがとう。」
ジャンはエマの背中を優しく摩る。
“ありがとう”
自分には勿体ない言葉だと分かっているのに、
その言葉が心に優しく響き、
さっきまでの考えが
少しずつ取り払われていくのを感じた。
「……ジャン。大好き。」
エマが思わずそう口にすると、
ジャンは一瞬で顔を赤らめ、
「は……、え?今の何?」
と、エマを少し離して目を見つめる。
「ジャンと出会えて、本当に良かった。」
エマは目を伏せたまま言う。
「恋人にはなれないけど、
ほんとに大好きなんだよ……」
ジャンはその発言に少し笑うと、
「ありがと……
まぁ、恋人にはなれないけど、
ってのは余計だけどな。」
そう言って再びエマを抱きしめる。
「俺もエマさんのこと、大好きだよ。」
ジャンの声は優しく、
エマの心をまた少し癒す。
「だから、もう二度と
ここに居なきゃ良かったなんて言うなよ?」
エマはジャンの胸の中で頷いた。