第25章 存在意義
その時。
「エマさん。」
厨房の外から自分を呼ぶ声に反応し、
顔を上げた。
「……ジャン。」
エマは自分に笑顔を向ける
ジャンを見ると、
自然に涙が込み上げる。
「ちょ、ちょっと、何泣いてんだよ?!」
ジャンは思わず声を上げ、
厨房の中のエマの手を引いて
食堂の隅へ連れ出した。
「やっぱり怖かっただろ?
ごめんな、行くの遅くなって……」
ジャンはそう言いながら、
エマの頭をそっと撫でる。
エマは話そうとするが、
嗚咽で声を発することすら難しく、
黙ってジャンの服を掴んだ。
「エルヴィン団長を憲兵の基地に
呼びに行った後、
俺が邪魔になったみたいで
そのまま放置されたから、
またすぐこの基地に戻って
リヴァイ兵長に報告したんだよ。」
ジャンはエマの頭を撫でながら話し出す。
「それで、その後すぐ駐屯兵に
掛け合おうと思ったんだけど
丁度、街の酒屋で
ピクシス司令を見かけたから。
エマさんとピクシス司令の関係は知ってたし、
ここは司令を呼ぶのが確実だと思って声掛けたら
司令、あの男のこと知ってて。
だからあいつらの基地もすぐに分かって
助けに行けたんだよ。」
ジャンの行動は、
17歳とは思えないほどに
冷静かつ的確なものに思えた。