第24章 生きている価値
エマの懇願するような叫びを聞いて
男たちはそれを嘲笑するかの如く、
笑い声を上げる。
だがこの言葉は、人の形をした
有害な獣共にかけた言葉ではない。
自らの命をなげうってまで
庇おうとしてくれる、
エルヴィンに訴えたかった言葉だ。
エルヴィンは、自らが殴られるだけでは
男たちが満足しないことに気付いている。
それと同時に、長髪の男は、
他の男にエルヴィンを殴らせながら、
その傍らで私を犯すということを
察しているのだろう。
だから、男たちの目を
全てエルヴィン自身に集中させるため、
わざわざ自らの甚振り方を
指南し、挑発し、命を張ってまで
守ろうとしてくれている……
何故ここまで私を想ってくれるのか、
私のどこに、自らの命を顧みず
守りたくなるような魅力があるのか、
どれだけ深く考えたとしても
一生理解できそうもない。
エルヴィンの目は長髪の男だけを見据え
もうエマが何を言っても取り合う気はない、
という意思表示に思えた。
私なんかよりエルヴィンの
存在価値の方が数十倍、数百倍、
……いや、数千倍も高いに決まっている。
そんな誰にでも分かるようなことを、
何故エルヴィンは分かってくれないのか。
「エルヴィンさん……
お願いですから、もう、やめてください……」
エマは懇願するように呟いた。