第22章 相変わらずの目撃者
「そんな落ち込むなよ。
俺は別にいいから。」
ジャンは励ますように
エマの肩を叩くと、
エルヴィンとエマが
身体を合わしていた時ことを思い出しながら、
「それに、それ相応以上の口止め料、
既に払ってもらってるからな……」
と、冗談めかして言った。
エマは再び顔を赤くすると、
「もう忘れて!記憶から抹消して!!」
そう言ってジャンの腕を掴み、
ブンブンと振り回す。
エルヴィンはその様子を見ながら
少し頬を緩め、
「だが私は、忘れたくなくなる程に
相当良かったよ。
これまで以上に、
君以外の人間を抱く気が失せた。」
と、エマの耳元で囁いた。
「……私も相当良かった記憶はあります……」
と、赤面した顔のまま
本音を漏らすエマを、
エルヴィンは思わず強く抱きしめた。
「ちょ……、ちょっと、
俺の目の前でそんないちゃつくの、
やめてもらえませんか?」
ジャンはその様子を見て声を上げる。
「ああ。すまない。
だが、ジャンはこれ以上のものを
見ているから大丈夫だろ?」
エルヴィンの冷静な物言いに
エマはますます赤面し、
両手で顔を覆った。