第22章 相変わらずの目撃者
「君は本当に優しい子だな。」
エルヴィンの声は温和で、とても優しい。
「君の考えは素直に嬉しいよ。
だが、私は彼女に自分で
選択してもらいたかったんだ。」
ジャンは穏やかに言葉を発する
エルヴィンの顔を見上げる。
「エマには、本当に欲しいものを
手に入れて欲しかった。
彼女が今まで色々我慢してきた分、尚更だ。」
「……でも、それだったら
団長の本当に欲しいものは
手に入らないじゃないですか……」
「それは君も同じことだったろう?」
エルヴィンはジャンの髪を
くしゃくしゃと撫でた。
「絶対に手に入るものなど、たかが知れている。
だからこそ私は、絶対手に入らないと
分かっていてもエマを愛した。
……きっとこれから先も、ずっとだ。」
ジャンはエルヴィンの露草色の目を、
食い入るように見た。
「彼女には、
そこまで想えるくらいの魅力がある。
だからこそ誰よりも
幸せになって欲しいんだよ。」