第3章 問題1 これは寝癖であって天パじゃない
「やーいやーい、天パ女――!」
そうからかわれ、少女は自分の髪の毛を触ってから言った。
「これは天パじゃなくて寝癖だって言ってるでしょうがァァァァァァァ !!」
少女の拳は見事アッパーを繰り出すのだった。
江戸のトラブル娘
問題1 これは寝癖であって天パじゃない
「全く。人を天パ天パって失礼だよ !警察呼ぶよ !! 」
ずびっと指を指して言い切った少女に少年は顎を押さえながら言った。
「警察呼ぶのはこっちだってのォォォォ !! 顎外れるっての !! 」
「寝癖と天パの見分けの付かない奴の顎なんか外れちゃえば良いんだよ!」
腕を組んで言い切った少女に少年は呆れ顔で見て呟いた。
「……可愛くね――」
「何か言った?」
「……や、何でもねぇ」
冷や汗ダラダラで目を泳がせている少年に向かって少女はずびっと言うのだった。
「寝癖を舐めるなよ」
◆
「んぁ――――帰りにチュッパチャップス買って帰ろうかなぁ……コーラ味三十本くらい」
そんな事を言いながら帰り道を歩いていると後ろから豪速球で走ってきた少年が叫びながら言った。
「お――ま――えェェェェェェェェ !! 」
「ん?」
後ろを振り返るのと同時に少女は少年の拳を顔面に受けるのだった。
「イタァァァァァァァァァ !! 鼻骨折れっ………折れるゥゥゥゥゥゥゥ! 」
鼻を押さえつけて悶える少女に少年は言う。
「ヲイ !! 優姫、何日直サボって帰ってるだよ !! 」
「ふぇ…………日直?」
優姫は涙目で少年を見上げて少ししてから言った。
「あれ?私日直だったっけ ? 貴史」
「日直だって言ってるだろうがァァァァァ!」
スパーン、と頭を叩かれ、優姫は痛そうに押さえるのだった。
「いった――い !」
「痛くやったんだから当たり前に決まってるだろうが!さっさと戻れ !! 」
貴史に言われ、優姫は少し考えてから言った。
「じゃあ……戻るからコンビニでチュッパチャップスコーラ味三十本買ってきて」
「お前一人でそんなに食ったら糖尿病間違い無しだってのォォォォォ !!」
「……買ってきてよ」
じーっと見上げて言う優姫に貴史は溜息をついてから言った。
「分かった分かった、買ってきてやるからお前先に学校戻ってろ」
「わーい、貴史ありがと――」