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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第12章 降りし日は、貴女と。【All Characters 別邸✉】


それは、テディの誕生日が近づく秋の宵。



「わぁ、………雨」

この世とは別の空間にある、天使たちの脅威が大陸全土を覆うように支配する世界。



その日、私はデビルズパレス別邸一階の執事たちと一緒に、エスポワールの街へ来ていた。

二人がフルーレが注文していた新しい布地を取りに行っていくのについて行ったのだ。



別の洋裁店へと向かったテディを待っていた時だった。



鼻先に雫が落ちてきて、それは瞬く間に降りしきった。

石畳に落ちる度に、幾重にも輪を連ねながらその色を濃くする。



「あちゃあ、………結構降り出してんな」

抱えた布地が濡れないよう、魔導服のジャケットのなかへ滑り込ませながらハナマルが苦笑する。



「主様、御手を失礼。………馬車まではまだ距離がございますので、一先ず宿を探しましょう」



「うん、わかった」

さっと彼が差した傘のなかに入るよう、差し伸べられた指をとる。

彼女のほうへと傘を傾けるとそれを見ていたハナマルが呟いた。



「ユーハ〜〜〜ン、………ちゃっかり自分だけ主様と相合傘しちゃうんだ?」

からかうような瞳。

されど羨ましそうな視線を向けるハナマルに、彼は唇をひらく。



「貴方は普段から鍛えていますし、問題ないでしょう。

それに馬鹿は何とやらと昔からの慣用句があるではないですか」

微笑んだまま皮肉を口にする。それに、彼はぐっと吐息を呑み下した。



「おいおい、………このハナマル様を馬鹿扱いするなよ……。」



「………くしゅ、」

身を震わせてくしゃみをすると、ふた組の瞳がはっとみひらかられる。


「申し訳ございません、主様。………では、急ぎましょう」



「うんっ」
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