第11章 慈しみの雨【🌹 → 主 ← ✝️ ✉】
下記より、ハウレスSide】
「っ………。」
かち合った瞳に、思わず身を翻す。
眉根を寄せ、染みの広がっていく胸元を握りしめた。
(……主様、)
頭では今すぐ引き離すべきだとわかっているのに、凍てつくその身はその思考さえも拒んだ。
「……俺も、弱くなったものだな」
浮かべた苦い笑み。
その腕のなかの彼女は、心からアモンを心配していたのが見て取れて、
微笑いあうその姿は、とても穏やかで幸せそうに視えたのだ。
「せめて、許されるなら——」
声にならない願望(ねがい)をつぶやく。
静かに見守る彼を讃えるように、花の匂いが吹き抜けた。