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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第9章 いたわりの花束【All Characters(2階組) ✉】


とある昼下がり。彼女は2階の執事たちとお茶会をしていた。



「どうぞ、主様」

ハウレスに椅子を引かれ、「ありがとう」と掛ける。



テーブルの上にはベリータルトと温かな紅茶が並べられ、降り注ぐ陽光は柔らかく心地よかった。



「隣、失礼するっす」

タルトを切りわけたアモンが微笑んで、彼女の右隣りへと座る。

ぽちゃん、ぽちゃん、とカップに角砂糖をふたつ入れ、それを見たボスキが声を上げた。



「おいアモン、砂糖入れすぎじゃねえか?」

アモンの隣りにかけて、咎めるように呟くと。



「いいんすよ。オレは『誰かさん』の手伝いでいつも忙しいんすから」

そう言ってからかうように笑う。



「ぐっ……お前な、」



「ほらほら、ふたりとも……主様の前だよ」
控えめに口を挟むフェネス。



「主様、申し訳ございません。煩かったでしょうか」

ハウレスの言葉に、「そんな事ないよ」と慌てて手を振った。



「賑やかで、とても楽しい。

元の世界では、なかなかこんな時間は取れないから」

ほんの一瞬、その瞳が翳る。

けれどそれは刹那の刻で、すぐに常のひかりを宿した。



「主様……?」
四つの瞳が案じる色を宿すけれど。



「なんでもないの。………ほら、紅茶が冷めてしまうよ」

柔らかな瞳で拒絶する。そのひかりに、ひらきかけた唇で言葉を呑み込んだ。



「「……………。」」



「もう……。」
黙ってしまった一同に、困ったように微笑んだ。



「たしかにあちらの世界では忙しいけれど、

こうして貴方たちが気遣ってくれるから頑張れるよ」

柔いやわい、春の陽光のような眼差し。そのひかりに、陽が差すのはそれぞれの心。
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