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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第8章 気高き華【🦾主 ← 🫖 & 🌹】


「ん、あ……? ベリアンさん、主様知らねえか?」

そう、俺が呟いてすぐとらえたのは、ドアの開閉音と。



「ボスキくん……主様なら、」

現在、時刻十四時。

五月に入ったばかりの午後は肌寒いという気候ではなく、

窓の外からは暖かな陽光が降り注いでいた。



「あ、ボスキ! ここにいたんだね」

ふふ。なんて微笑みながら、やや呆然と立ち尽くしている俺の元へとつま先を目指す。



「大丈夫だ。もうあんたを置いてどこにも行かねえよ」



「……そう言っていつも無茶するのは貴方じゃない」



「それはあんたを守るために……て、おい! 俺が悪かったから拗ねないでくれ」

むくれた表情に、俺は主様の手をつかんだ。

さらりとした青灰色の髪を撫でていると、彼女とともに部屋へと入ってきたアモンが笑う。



「おふたりとも、そこでイチャつかないでくださいっすよ」

そう言って、からかうようにまた笑う。



「おいアモン……これの何処がそう聞こえたんだよ」



「どこって……全部っすよ全部。

特に、君を置いて、もう何処にもいかないさ……!のとこ辺りっすかね〜。」



「お前なぁ……変な脚色入れるなよ」



「あ、そういえば。アモン……さっきはありがとう」



「っておい、主様? スルーしないでくれよ」



「ごめんなさいボスキ、貴方を探すのを手伝ってくれてたの」



「いえ、オレは………、」

向けられた微笑に、ふいと視線を解く。

みずからの項に手をかけ、その頬が熱を宿していた。
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