• テキストサイズ

訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第6章 仮面の下で【🫖 ⇋ 主 ← 🦋‪ & 🍷 ✉】


ヴァリスは窓の外をぼんやりと見つめた。

華やかにドレスアップした紳士淑女が、次々とこの館に足を踏み入れている。



あのなかの何処かに、今回接触を命じられた人物がいる筈。



窓ガラスには、深青のドレスに身を包んだ自分が映っていた。



青一色の時に、大きくひらいた襟ぐりと結い上げた髪には白薔薇が飾られている。



胸元から腰にかけては身体の線にぴったりと添っていて、彼女の少女らしい線の細さを強調していた。



スカート部分はフィッシュテール状に切り替えられ、

裾には縫い込まれた水晶の粒やスパンコールがきらきらと煌めく。



シンプルな装飾であるのに、砂糖菓子のような甘さの滲むそのドレスは、フルーレの力作だ。



けれど、彼女の表情は、深く沈んだままだった。



「主様、入ってもいいかな」

控えめな叩扉のあと。とらえた声に笑みをのせる。



「どうぞ」



「失礼するよ」

入ってきたのはルカスだった。琥珀の瞳を柔く細め、微笑みに染まる唇。



「美しいね……。」

すり、と頬に触れてくる。目の前の麗人に気後れを感じながら、彼女は唇をひらいた。



「ルカスこそ……素敵だよ」

長めの前髪をオールバックに撫でつけ、サイドの髪をひと房垂らしている。



常ならばふわりと波うつ髪はボリュームを抑え、右サイドに流してリボンで結わえていた。



裾には銀糸で蝶の刺繍が施されたタキシードを完璧に着こなしたその姿は、

まるでお伽話から抜け出た王子様のようだった。
/ 242ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp