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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第4章 今宵は貴方と【✝️ ⇋ 主 ← 🦾 & 🌹 ✉】


「主様、お怪我はありませんか?」

ハウレスの言葉に頷く。



「うん、大丈夫だよ」

会場が聴こえてくる音楽に、張りつめていた緊張が解けていく心地を覚えた。



「踊りたいのか?」

ニヤリと口角を持ち上げるボスキ。



「うん……。この日のために練習したもの」

微笑む彼女に手を差し出す。



「踊って……頂けませんか」



「……喜んで」



◆◇◆◇◆◇◆◇



優雅な旋律に合わせ、踊るふたり。



(ハウレスのやつ……最初とは比べ物にならないくらいに上達したんだな)

それもすべて、主様のためだろう。

ちくりとわずかな棘が胸を刺す。目を逸らすことなく、ふたりを見守っていると。



「ボスキさん……睨みすぎっすよ」

苦笑交じりに告げるアモン。



「うるせえよアモン。ただ、みてるだけだ」

棘のある言葉とは裏腹に、その瞳は優しい。



「主様が選んだなら、オレ達は祝福するべきっすよ」



「……そうだな」



(たとえ、もう届かないとしても——。)

俺は変わらず、あんたを慕いつづけるよ。



さぁ……と吹き抜ける風が、彼の想いを、咲き誇る花の匂いをさらう。

ひらり。黒薔薇の花びらが静かに散った。
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