第26章 今宵はふたりで【過去作派生中編 🤍→主←🐾 ♟️】
「はい、スロー、スロー、………クイック、クイック」
ぱん、ぱん、とラトが手を打ち鳴らす音に合わせてロンドを踊る。
視線を結びあったまま、フルーレのピアノの旋律に合わせて踊り続ける。
踵の高い靴をダンス練習質の床に密やかに打ち付け、
肩に添えた指からはシロの体温と、
程よく鍛えられた身体付きを感じ、仄かに痺れた胸の奥の感情とともに思考から追い出した。
「ストップです、………主様、また指先がぎこちなくなっていますよ」
ラトの指摘にフルーレのピアノの音が止む。
彼が言うには、表情と踊る際の指先の所作が何処か硬くなってしまっているのだと言う。
ヴァリスは苦笑して見せた。
「うーん、………なかなか難しいんだね」
するりと指が解かれ、その唇に優しい弧を描く。
「みんな………私のために練習に付き合ってくれてありがとう」
そう言って微笑いかけられ、フルーレが唇をひらく。
「主様はとてもお上手ですよ! だから自信を持ってください」
「えぇ、フルーレの言う通りですよ。
主様が表情と指先の所作が時折硬くなるだけで、ステップ自体は完璧です」
ラトはそう告げてから、ふと人差し指を自分の唇に当てて艶やかに微笑んで見せる。