第24章 八百比丘尼の花籠【☔️主 ← 🌟 & 🗝、✉️】
それは東の大地の街フガヤマでの歓待の裏面を知った、ある宵のこと。
「主様ぁ、あっちのりんご飴、とっても美味しそうですよ!」
私の手を引いたラムリが無邪気に微笑う。
その夜、私はナック、ラムリ、ユーハンの三人と祭りの夜を楽しんでいた。
フルーレの仕立てた茉白の地に薄紅色の山茶花の花弁を散らした柄の浴衣に身を包んだ私は、
ぐいぐいと手を引くラムリに微笑いかける。
「うん、………いこう」
風に揺れる提灯の灯りに、キラリと光る山茶花の簪。
結い上げた髪のなかで、とんぼ玉の下げられた房飾りがゆらゆらと揺れていた。
「ラムリ、主様の御前ではしゃぎすぎですよ」
ナックがそう口にする。
伸ばした指がラムリの指を解かせると、彼は途端に不愉快そうに目を眇めた。
「ナック……せっかくのお祭りなのに、
そんなに真面目ぶってると主様が楽しないんじゃないの?」
「黙りなさい。真相が判明した後とはいえ、常に警戒しなければならないでしょう。
いつ何時でも、主様をお守りできるよう務めるのが我々の責務では?」
ナックが冷ややかに指摘すれば、ラムリの頬に朱がのぼった。
どうやらはしゃいでいた自分を恥じているようで、悔しそうに唇をかみしめる。
「もう……!ふたりとも———」
互いに睨み合う二人の間に割り込んで、言い合いを止めようとした私の手首をユーハンがつかむ。
「!」
思わず彼を見上げると、「シイィ……!」と微笑んだ唇に人差し指をあてる。
「(今のうちに、二人きりになりませんか?)」
声なき言葉でそう伝えると、私の指を導いた。