• テキストサイズ

訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第23章 陽だまりの中で【あくねこ学パロ予告SS、🌟 → 主 ← 🌹】


「ヴァリスーーー、いつまで寝てるのーーー。」

叩扉の音とともに母の声がする。そっと瞼をひらき起き上がると、

ぱち、………ぱち、と数回瞬いて、眼前を覆う霧を払った。



「おっっはよ〜〜〜、ヴァリスちゃん!」

にゅっと中庭のライラックの植え木から、両脚をハンガーのように器用に引っかけて、

蝙蝠のような状態で顔を見せたラムリに、彼女はびくっと驚きに身体を震わせた。



「きゃっ……ラムリ!?」



「あははっ、………キミはいつも驚いてくれるから見ていて飽きないよ♪」

悪戯っぽい笑顔とともに木からベランダへと飛び写ってきた彼に、

ヴァリスはそっと告げる。



「もう……危ないからやめてっていつも言ってるでしょ?」

からかわれた彼女はふいとそっぽを向く。けれどラムリは益々嬉しそうに微笑うだけ。



「えへへ……やっぱりキミは優しいね、………(ひとり占めしたくなっちゃうくらいに)」

ぽつりと呟かれた言葉は聞き取れなくて、彼を見つめた。



「………? なあに?」


「ううん、何でもないよ。それよりさ………キミの着替え、手伝ってあげる!」

そう言って部屋の中へと足を踏み入れる彼に、彼女は紅くなりながらパジャマの前身頃を押さえた。



「じっ……自分で出来るから! 向こう向いてて!」



「えーーー? ボクら幼なじみなんだから、遠慮しなくていいのに………、」



「そういう問題じゃないの! でないと私、ラムリと一緒に通学しないよ?」

その言葉に「それは困るから! ………わかった」と漸く窓側へと身体の向きを変える。



そしてクローゼットの中から、今日編入する学園の制服を手に取った。

王立学園ミスティック・フェアリー校。幼なじみのアモンとラムリの通う学園の制服だ。



ぱりっとノリの効いたシャツを羽織り、ぷち、ぷち、と釦を留めていく。

スカートとジャケットを身に纏い、黒のタイツを履いて。



髪はポニーテールにしようとヘアブラシを取り上げると、

ラムリがその手のなかのそれを抜き取った。
/ 242ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp