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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第20章 月嗤歌 ED Side A - II【別邸組 *♟】


「私もここにいることを、忘れないでいただけませんか」

花口を広げていた指が上部にずれ、花芽を押し潰す。

花弁のかき分けながら舌先が埋め込まれて、伸ばした指が彼の頭に触れた。



「足りませんか……?」



「ち、違………ッ! あぁぁっ……!」

のたうつように乱れるその姿に、より漲った象徴が押し当たる。



「……あんたも嫉妬するんだねぇ」

微笑いながら胸を捏ねるハナマルに、ユーハンは「突然です」ときっばりと告げる。



「奔放かあなたと違って、私はずっと抑え込んできたのですから———」



「っふ……若いねぇ。………けど、主様が先に求めるのは俺だけどな」



「望むところです」

戯れを口にしながらも、それぞれの責め苦が止まることはない。



「どっちが気持ちいい?」



「勿論私ですよね……?」

彼らの言葉は、まるで蜂蜜の底なし沼のよう。



その声音には決して強制めいた力は宿っていないのに、

甘くてにがてその沼にゆっくりと引き摺り込むように、確実にヴァリスを囚えて離さない。



「やっ……そこで喋らなっ………んあぁっっ」

形ばかりの拒絶を口にしかけど、くすくすと微笑いながら吸い上げられるだけ。



その唇から自分の名を引き出そうとするかのように、烈しく啜られて逃げるようにその身がうねった。



「ぁ、……あぁっ! 駄目、………もっ、離し———あんっ」



「大丈夫だぞぉ、主様。そのまま逝けばいい」



「この舌と唇に翻弄される貴女を、もっと私に見せてください———」

烈しく抗う身体を押さえ付け、楽しそうに言ってのける。

先刻から身体の奥底で溜まりつづけていた熱が、今にも弾けてしまいそうに膨れ上がった。
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