第19章 月嗤歌 ED Side A - I【🧸 → 主 ← 💮 ♟】
「ぐぅっ」
薄暗い拘束室の壁に、手枷を付けられた商人が繋がれる。
「お前ら……こんなことして許されると———、」
唾を吐き散らして喚くレビに、その髪をつかんで告げる。
「それはこっちの台詞だ。あんたこそ、主様に何したんだ」
かつてない程に凍てついた声音だった。
それだけに、ハナマルが烈しい怒りを抱いているのだと悟る。
すると、商人の咽喉から、くくっ……と乾いた笑みが零れた。
そのまま気が触れたように嗤い出す。
「何がおかしいんだよ?」
その胸ぐらをつかみかかるハナマルに、彼はますます嗤うだけ。
拳を放とうと振り上げていた手を止めたのはテディだった。
「ハナマルさん、お気持ちはわかりますけど、
ここであなたがこの人を殴ったら主様が悲しみますよ」
その言葉にゆっくりと握しめていた指を解く。
漸く笑い声を収めた商人は、尚も嘲るような笑みを貼り付けたまま告げる。
「主様、………主様主様! お前らはそんなにあの女が大切なのか?」
「……どういう意味だ?」
その問いかけに、彼は馬鹿にしたように嗤うだけ。
そして彼は嗤いの余韻を滲ませたまま供述をはじめた。