• テキストサイズ

訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第17章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


「ベリアル殿、ナルス殿……立てるかしら………っ、

………まだ眠っているのね」



「エーファン、皆様を客間へご案内して差し上げてくれ」



「畏まりました。———では……アリエ様、どうぞ……こちらへ」



「アリエ殿、貴女にひとつだけお願いをしたいのです」

コツ……と踵の高い靴の音が止まる。

振り返ったその先で、彼は鍵束のうちの一つを掲げて告げた。



「この金の錠前の扉には、近づかないでいただきたい。

その時は、貴女を——————、」

真意を探すように見交わす瞳。その視線の先で彼女は微笑んだ。



「承知しましたわ……わたくしの友人にも、よく言い聞かせておきますわね」

コツ、コツ……といくつもの靴の音が遠ざかっていく。



誰もいなくなった私室で、彼は胸元の細い鎖を引き出した。



そこにはムーンストーンの指輪が通されている。

燭台の灯りにゆらめく茉白の宝石に、みずからのすみれ色の瞳が映った。



(……彼女は、どんな顔をみせてくれるのだろうか)

浮かべた笑みは月しか知らない。

………蝋燭の灯りが彼の心を映すようにゆらめいていた。
/ 168ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp