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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第17章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


(よかった……カレッセン公は場合によっては秘薬を譲ってくださるんだ。

私の本当の弟ではないけれど、苦しんでいるあの方を救えるチャンスがまだあるんだね)



「そろそろお開きといきましょう。御手をどうぞ……アリエ殿」

『立てますか?』と恭しく差し伸べられる。



白くたおやかな指がふれ、なんの警戒心もなく手が重なる。

その手を引き寄せた。



「っ…… カレッセン公?」

その腕の中のなかで戸惑いに上ずった声がする。

驚いておもてを上げた、その唇を重ねた。



「「!」」

一同が驚いているのを場の空気で見止める。

ややあって解いた唇。その視線の先で、みるみるその頬が紅に染まった。


「———失礼。ワインの雫が、こちらに乗っているようでしたので」



「カレッセン公っ……。」



「どうやら、貴女は余程すれていない御令嬢のようだ」

そっ……と薔薇のコサージュにふれた指が払い落とされる。



彼女を守るように背にかばい、思い切り睨み付けた。



「公爵殿、戯れが過ぎるぞ」



「ボスウェル殿、わたくしなら大丈夫だから! 少し驚いてしまっただけよ」

その言葉に瞳のひかりを和らげる。

トク、トク……と二度の心臓の鼓動が打ち鳴らす程度の間があった後、ふいと顔を背けた。
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