第18章 月嗤歌 ED Side A【☔️ ⇄ 主 *♟(激裏)】
「では、………貴女のその身に訊ねるとしましょう」
艶めいた低音。その声音は酷く優しく、それでいてひたむきで、確かな情熱をはらんでいた。
「………?」
その言葉の意味を図りかねて、戸惑った瞳で見返す。
けれどその意味はすぐにわかった。
「っあ、」
胸をつかんでいた掌が、華奢な身体のラインをなぞるように撫で下ろしていく。
ゆっくりと、………とてもゆっくりと。気が遠くなりそうな程優しい手付きで這う掌に、
ぴくん、ぴくん、と小刻みに身体を震わせてしまうと、
そのさまを見下ろすフェアリーストーンの瞳と視線が結ばれた。
常ならば柔らかな温もりを映す瞳が烈しい焔をはらんでいる。
その双眸は月灯りが照らすのみの室内で殊更に明るく浮かび上がっていて、
ヴァリスの反応を熱い眼差しで観察するごとく見下ろしていた。
「ユーハン、」
その唇で名を紡ぐ。
滲んだ瞳で微笑めば、はっと吐息を封じる気配がした。
「なぜ、………貴女は、」
「え……?」
瞳をのぞき込もうとした目元は、白魚のような彼の指に覆い隠される。
強制的に黒曜に塗りつぶされた視界が怖くて、伸ばした指を彼のそれが囚える。
「大丈夫、………ここにいますよ」
ちゅ、と手の平に唇が落とされる。
けれどその右手は依然としてヴァリスの瞼を覆ったままで、その掌の下で視線をさ迷わせた。
「眼、隠さないで」
弱々しく訴えると、ぐっと彼が近づく気配がして、熱い吐息が耳朶にかかる。
びくりと肩を震わせると、ふっと彼が微笑んだ。
そしてその指が外されたかと思うと、すぐに別のもので目元を覆い隠される。